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ぐうの日常

香港映画俳優トニー・レオン梁朝偉を地味に応援する管理人ぐうの、日常のつぶやきです。  画像の無断転載は禁止です。

周さんの貴重なお話 

 

6月2日(土)シネマート六本木にて、通訳をされているサミュエル・周さんのお話を聞いてきました。

実は水曜の夜「インビジブルウェーブ」を観に行った時、足元を雨に濡らしたのがよくなかったか帰宅してから喉と頭が痛くなってしまいました。木曜病院で薬をもらったものの、この調子だと周さんの講座もキャンセルすべきかと覚悟していたのですが、なんとか参加できました。悪化しても日曜に寝てればいいしと思い。(笑)
(こういう時は「そんな体で外出は止めときなさい」などとは一切干渉しない夫の存在が有り難いです)

シネマートさんのお話では今回の講座は今までで最多の136名(と言ってたと思う)の参加、立ち見の方もいらっしゃるとのことでした。

周さんのお話、以下おおまかな内容です。

1.「通訳」雑学
 通訳の種類としては
  「同時通訳」・・国際会議などで多い、先日の「パイレーツ・オブ・カリビアン3」のようにゲストが多い時。話している内容の60%を訳せたらパーフェクトと言われている。
  「逐次通訳」・・少し喋ってから通訳。100%訳すことができる。
  「ウィスパーリング」・・囁き。同時通訳に近い。他の人が喋っている時、相手の人の耳元で囁く。通訳は誰もやりたがらない方法。雑音が多くなったり、早口で喋ると唾が飛んだりするので。○○の通訳でこれをやっていたら、傍の監督に「うるさい!」と言われて、ウィスパーリングを止めたこともある。(日本語が多少わかる俳優さんだったので「訳さなくてもいいですよ」と、そこから訳すのを止めた、とのこと)

 通訳でよく言われること
  「他人依存型」・・自分の存在を消す。彼らがいないと自分も必要ではない。
  「ブドウ糖信仰」・・いつもノート、ペン(3本くらい。インクが出ないと困るので)を携帯しているが、15分くらい喋ると脳が疲れてくるのでブドウ糖の補給が必要。一時間くらい経つと頭がぼーっとする。その為通訳は鞄の中にチョコレートなどの甘いものを入れておく。今は便利な5gくらいのブドウ糖の粉がある。麻薬みたいに見えますが、これをなめてブドウ糖を補給する。
  「口八丁手八丁」・・食事中の通訳は大変。食べる暇がないから。食べてないと監督や俳優が気を遣って自分が食べるまで喋らなかったりするので、食べながら相手の話を聞き(数字などが出たらメモする)、話し終わったら通訳。早食いになってしまう。
  「隠遁術」・・舞台挨拶で俳優と一緒に上がると写真撮影で写ってしまうのでいかにその時隠れるかが難しい。(カメラマンは通訳を撮りたい訳ではないので)トイレに行くと進行が中断してしまうので職業病として膀胱炎になる人が多い。
  「ジューサー」・・通訳はオレンジをジュースにして飲ませるような仕事。自分は機械になっているような感覚。時間や言葉の制限で全てを伝える事はできない。
2.「中国語」雑学
 
 「西欧語にあるような文法はない」・・中国語は「漢字語」と思った方がいい。北から南まで言葉が通じなくても漢字にすると理解しあえる。文法らしい文法がない。字を並べていけばなんとか通じる。動詞と名詞を重視する。
 「動詞の時制は明示されない」・・時間をあまり気にしない。文章に『今』『昨日』などと入れて区別する。
 「品詞の区別(=文法上の性質や振舞いに基づく語の分類)はない。動詞は動詞、形容詞は形容詞と言う区別をあまりしない。
 「単数・複数の区別が曖昧」・・日本語も単数と複数の区別をあまりしない。『人』と言った場合、一人なのか百人なのかわからない。

 日本語は受身的な言い方が好き。中国語はできるだけストレートに表現する。ある時、日本のニュースで「首を絞められて殺された」と言うのを中国語に訳さないといけない時があり、中国語では「ヒモ」で絞められたか「もっと幅のあるタオルのようなもの」で絞められたか、「手」で絞められたかによって動詞が異なる。また前から絞められたか、背後から絞められたかによっても。ニュースではそれがわからないので警察に電話して詳しく聞こうとしても教えてくれなかった。
 「手にする」と日本語で言っても中国語の場合は持ち方によって十数種類の訳に分かれる。

 「下 雨 天 留 客 天 留 我 不 留 」

  ある人が友人の家に「泊めてよ」と訪ねていったが翌日が雨なので帰らない。次の日もまた次の日も雨で帰らない。友人は「帰れ」とは言えないのでこの言葉を紙に書いて出ていった。
  意味:雨が降る。天(神様)は客を泊める。神様は泊めるが、私は泊めたくない。
  友人のメモを見て、客人は帰ろうと思っていたが癪になったので文章に点を打っていった。

 「下 雨 天 留 客 天 留 我 不 留 .

 意味:雨が振る日、客を泊める日。我を泊めるか?泊める! 

 (※中国語に不案内の為点の打ち方が違っていましたら申し訳ありません)

 ※周さんによる参考書のご案内:石川九楊「漢字がつくった東アジア」筑摩書房、2007.4.25初版、定価2200円
漢字がつくった東アジア



3.「看字読画」とは

 日本画「桜」(福田平八郎)の絵を紹介しながら。
 この絵では満開の桜ではなく、桜の木の幹が描かれている。赤い葉が幹から出ているのは春。この幹の上の方は桜が咲いているのだろうと観る人に想像させる絵。
 漢字は特殊な文字。絵のように文字がわかる。高速道路の標識でもドライバーが一番早く認識できるのは漢字。(2位、ひらがな。3位、カタカナ)
 チャウ・シンチーの初期の映画は吹き替えをしてもあまり受けない。広東語を巧みに使っている映画だから、日本語になかなか置き換えられない。笑いのツボが違う。マイケル・ホイの映画の吹き替えは元々の台本・台詞を無視してあてているから面白い。今の時代なら(台詞を改変すると言う手法は)難しいかも。
 感動は「常識」や「教養」と密接な関連がある。

 映画監督の通訳はやりがいがある。いろんな話が聞ける。記者の方は映画をしっかり観て質問をすること。そうすると監督は喜んでいろんな事を話してくれる。質問の仕方を工夫してほしい。時々くだらない質問が来る。(信じられない話ですが、ジョン・ウー監督に『今までどんな映画を撮ってきたのですか?』と聞いた記者がいたそうです。当然ながら監督は不機嫌になってしまったとのこと)

※周さんによる参考書のご案内:太田直子「字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ」光文社新書、2007.2.20初版、定価700円 
字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ


4.様々な感動から生まれた映画(電影)

 鈴木清順監督はフランスのヌーベルバーグに影響を与えた。映画「夢二」(鈴木清順監督)の音楽は梅林茂。彼は絵がないと音楽が書けないタイプ。この映画の中の花嫁列車のシーンで使われているのが「夢二のテーマ」。「夢二」ではそこ一箇所しか出てこない。
 ウォン・カーウァイは鈴木清順の大ファン。この音楽と映像のマッチングを運命と感じ、この音楽のために映画を撮りたいと思って、「花様年華」でメインのテーマ音楽として使っている。「夢二」では一回だけ、それもバックグランドミュージックとして使われた「夢二のテーマ」を「花様年華」では5、6回使っている。
 この曲は観るものに衝撃を与える。俳優があまりにこの曲に合わせて演技しているので監督に尋ねたところ「撮影現場でこの音楽を流した。マギーもトニーも曲が暗記できたので、体に染み込んで演じられた」とのこと。
 ウォン・カ-ウァイ監督は「2046」で音楽を梅林茂に担当してもらっている。
 
 「呉清源ー極めの棋譜」・・田壮々監督が日本人が書いた本の翻訳を読んで、呉清源の一心不乱の碁の世界に深い感銘を受けてこの映画を作った。日本人俳優松坂慶子や柄本明も出ている。中国人監督が撮った日本映画と言う感じ。衣装デザインはワダエミが担当している。

質疑応答 

 Q. 周さんはとても日本語が綺麗ですが、どのように勉強されたのですか?
 A.26年日本に住んでいる。その前は全然話せなかった。日本語の響きが好きです。語学学習は最初の1、2年が難しい、3年目が辛い。沢山本を読むことです。まず正しい日本語の本を読んで、その後汚い言葉も学習します。どちらも知ってないと通訳ができませんから。

 Q.周さんが通訳された俳優さんや監督さんで良かった方はどの方ですか?もし何か印象に残っていることがありましたら教えてください。
 A.答えとしては全員いい人です。(笑)香港の役者や監督はきさくな人が多い。マギー・チャンが「HERO」で一人で来日してインタビューを受けていた時、私は喉の調子が悪くて声がかすれていた。その時、マギーが「ちょっと待って」と会見を中断してホテルの部屋に帰り、私にのど飴を持ってきてくれた。その後はマギーののど飴もおかげで声が出るようになった。とにかく皆さん個性がある方ばかり、表現の違いで、はっきり意見を言う人は誤解されたりする事はあるかしれない。監督は厳しい。変な質問をすると怒る場合もある。相手が怒ったら自分にも責任があると思った方がいい。

 Q.周さんは出身はどちらですか、又何ヶ国語話せるのですか?
 A.(何ヶ国語かと言うことには答えず)私は香港出身。広東語でも広州の人からすれば「変質している」と言う。中国語は地方によって様々。日本でも関西の中で奈良、京都、大阪では言葉が違いますね。京都の中でも地域によって話し方が違うと言います。
(※私も中国旅行の最中、ガイドの方に「中国語は何種類あるんですか?」と聞いたところ「10km離れれば、もう言葉が違う」とのことで、分類するのは難しいようでした。この感覚は日本人にとってはわかりにくい部分かもしれないですね)

周さんのお話はとてもわかり易く、予想通り上品な日本語で聞いていて心地よいものでした。話し慣れている感じがしたので普段何か講義のようなものをされているのかしらとも思いましたが、そのような事はないのでしょうか。俳優の通訳をするとファンの方々から羨ましがられることも多いようですが(「パイレーツ・オブ・カリビアン3」でチョウ・ユンファの通訳をした時は、後で知り合いの大学教授から連絡がありユンファ・ファンの教授からとても羨ましがられたとのこと)「私もミーハーですからファンの方の気持ちはわかります」と、とても紳士的に話されていました。
残念ながらトニーの裏話的なものは出ませんでしたが、「花様年華」の話が出て嬉しかったです。周さんも好きな映画だそうです。
ちなみに質疑応答の時、周さんの手にはしっかりとノートとペンがありました。

category: イベント

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コメント

 

ぐうさんのお陰でいいお話がたくさん聞けて本当に感謝しております。言葉のこと、映画のこと、両方とも納得のいく話が多く、自分の中でもやっとしていたことが少し整理できた気がしています。お体、お大事に。

藍*ai #a2fnBRhM | URL | 2007/06/04 00:19 | edit

興味深いです、ありがとう

 行きたくて仕方なかったので、要旨だけでも解ってありがたいです。ぐうさん、くれぐれもお体お大切に。それにしてもウー監督を不機嫌にさせた記者…最低ですね…(-_-;) 質問の仕方、少しは工夫できるだろうに。
 「単数・複数の区別が曖昧」はよく解ります。「人家」とか「人」が主語になってたりすると、最初はサッパリ理解できませんでした。強いて訳せば「誰かが~するとしたら」とか「(僕だったら)~と思うこともある」と、前後の脈絡を見て主語を考えなければならないんですよねえ。
>話し慣れている感じがしたので普段何か講義のようなものをされているのかしら
 一時期、東京で中国語教室を開いて講師をなさっていたと記憶します。友人が広東語の教え子でした。最近は字幕監修もなさっているし、日本での中華圏映画公開には無くてはならない逸材ですよね。いつまでもお元気で活躍していただきたーい!

nancix #q2FNM5.6 | URL | 2007/06/04 01:19 | edit

ありがとうございます

周先生のお話、私も行きたかったので
とても興味深く読ませてもらいました。
ありがとうございます。
通訳さんて、やはり、大変なお仕事なんだなと改めて思いました。
そして、私、勝手に、周先生は、北京語を母語としている方だと思いこんでいたので
今回、香港出身ということをきいてびっくりしました。

以前ぐうさんがこちらで紹介されていた
『ワッツインピクトリアル』の目次のところに
”Samuel Chow”という名前が載っているのですが
これも周先生なのでしょうか。
いろいろなお仕事されてるんですね。

お体の方はもう大丈夫でしょうか?
ご自愛くださいね。

pekky #hn7S5JsQ | URL | 2007/06/04 01:44 | edit

ありがとうございます。

ぐうさん、お加減は如何ですか。貴重な周さん(サミュエルだったのね)のお話をわかりやすくまとめて下さり、とても有り難いです。通訳する以外に気を配らないとイケない事があんなに沢山あるなんて、想像以上に大変なお仕事なんですね。ご紹介頂いた本は是非読みたいです。ぐうさん、ありがとう、お身体大事になさって下さいね。

ろくさん #RrxNLwv6 | URL | 2007/06/04 12:58 | edit

すばらしい!

ぐうさんの丁寧なレポートでまるでその場で聞いているかのような感じです!
周さんも丁寧な方だという印象を持っていましたが、
このレポートを読んでますますそう思いました。
中国語は「漢字語」、たしかにそうかもしれませんね。
でも、その漢字の意味と発音をつかむのが難しい!
「辛い」3年目をなんとか乗り切りたいです。
あまりにいい加減だったので少し心を入れ替えて
勉強します、ハイ。

かしこ #TBb5cWT2 | URL | 2007/06/04 23:58 | edit

皆様、ありがとうございます

すみません、体の心配までしていただいて。(汗)ヨワヨワ人間なもので。
メイデイの連日イベントと「インビジブルウェーブ」で、要は遊び疲れてのダウン、自業自得です。(滝汗)
ちょっと咳のしすぎで腹筋が痛いです。
なんとか治してレディースディには「女帝」に行きたいです。

>藍*aiさん

ご一緒にお話が聞けて良かったです。今年はいろいろイベントにいらっしゃれるといいですね。今度こそはゆっくりお話したいです。

>nancixさん

周さんは「通訳はオレンジをジュースにして出すようなもの」と仰ってましたが、さしずめ私のレポートはオレンジを皮だけにして出すようなものだと思いました。栄養分をうまく抽出するのは難しい作業ですね。

>前後の脈絡を見て主語を考えなければならないんですよねえ。

う~~む、そうなのですね。自分が勉強するとなると道のりは遠そうだぁぁ・・。

> 一時期、東京で中国語教室を開いて講師をなさっていたと記憶します

だからお話お上手なのですね。本当になくてはならない方です。お体に気をつけて(←お前が言うな!て感じですね)これからもご活躍してほしいです。

>pekkyさん

拙いレポートで失礼します。

>そして、私、勝手に、周先生は、北京語を母語としている方だと思いこんでいたので
今回、香港出身ということをきいてびっくりしました。

広東語も北京語も通訳されていますね。そして英語も発音が美しいです。別の所で周さんはご両親が上海出身(違っていたらごめんなさい)とのことを読みました。
それにしても日本語は日本人よりも美しい言葉で話されますよね、日本に来てから日本語を学んだと言うのにも驚きました。

>『ワッツインピクトリアル』の目次のところに
”Samuel Chow”という名前が載っているのですが
これも周先生なのでしょうか。

わ!気がつかなかったです。こういった雑誌の翻訳もされているんでしょうか。最近ではF4のヴァネスの通訳もされたそうです。

>ろくさん

>通訳する以外に気を配らないとイケない事があんなに沢山あるなんて、想像以上に大変なお仕事なんですね。

そうですね。観てる方は「トニーの傍で羨ましいぃぃ」なんてミーハーな事しか考えなくて反省です。

私も周さんが紹介してくださった本読みたいです。これからもいろんな事を学ばねば、ですね。ろくさんもお仕事お忙しいでしょう、ご自愛くださいね。

ぐう #ex3yOCrA | URL | 2007/06/05 00:19 | edit

>かしこさん

コメントありがとうございます!
そう、周さんて丁寧な方と言う印象ですが講座を聞いてますますそう思いました。そして謙虚な方です。謙虚でないと通訳は務まらないのでしょうね。ある意味自分の存在は消さないといけないのですから・・。

>でも、その漢字の意味と発音をつかむのが難しい!
>「辛い」3年目をなんとか乗り切りたいです。

学習されている方ならではのお言葉ですね!私も・・そう言えるように学習せねば。

ぐう #ex3yOCrA | URL | 2007/06/05 00:23 | edit

ぐうさん、素晴らしいレポートありがとうございます。
丁寧なレポートは今回の講座の復習にもなりました。

「字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ」、早速購入いたしました。
おもしろそうです。
「漢字がつくった東アジア」は入荷待ちです。著者の石川九楊さんは書道界では有名な先生ですし、趣味柄(?)漢字にはとても興味があるので今後の参考にしたいと思います。
それにしても周さんは感性豊かで博学な方でしたね。

「辛い」3年目・・・ここを乗り切れば少しは楽になるのですよね。がんばろう!!
ぐうさんも是非お仲間に(?!)

体調が早く回復されますように!!

チプドン #nmxoCd6A | URL | 2007/06/05 01:10 | edit

チプちゃん、早速本を購入したのですね。すばやいです!
(石川九楊さんは書道界では有名な先生なのね・・メモメモ)

これからもいろいろ教えてくださいね。頼りにしております♪

ぐう #ex3yOCrA | URL | 2007/06/05 19:50 | edit

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